注目キーワード
  1. ランキング

『夢』(黒澤明映画第28作品あらすじと解説):東日本大震災後の福島を予言したような映画

1990年(平成2年)5月25日に公開された映画『夢』。

まるで、東日本大震災の福島を予言した映画のように思えてならないのは私だけでしょうか?

この記事では、黒澤明監督の28番目の作品となる『夢』をご紹介します。

映画『夢』のあらすじ

 

『夢』は、『日照り雨』、『桃畑』、『雪あらし』、『トンネル』、『鴉』、『赤富士』、『鬼哭』、『水車のある村』の8つの物語からなるオムニバス形式の作品となっています。

『日照り雨』、『桃畑』では黒澤自身の幼少時代が描かれており、過ぎ去った懐かしい日々を振り返る内容となっています。

また『雪あらし』は民話の雪女から発想を得た作品となっており、『トンネル』で描かれている戦争は、自身が青春時代に体験した戦争という悪夢が、今だに自分を苦しめているということを現しているように感じられます。

また自分だけが徴収を免れ、多くの友人が戦死したいう事実を前にしたどうしようもない罪悪感から生まれた作品とも言えます。

『鴉』には、あのゴッホの有名な絵画が数々と登場します。

黒澤自身、ゴッホの絵の影響により画家として開花したと語っているほど感化されており、その想いがこの作品に溢れています。

『赤富士』、『鬼哭』は黒澤の原子力、先端科学への将来における危機感を現しています。

「生きものの記録」以来、黒澤作品の主要テーマが原水爆問題がでもあると言っても過言ではありません。

『水車のある村』では、黒澤自身の死生観が現れており、このような陽のさんさんとあたる明るい村でみんなに祝福されながら陽気に死にたいという強い気持ちが表現されています。

また第六話『赤富士』ではで原発への警笛を鳴らし、まるで未来を予見しているような作品となっています。

赤富士でには、富士山が噴火して原発が爆発して人々が逃げ惑うシーンがあります。

その時、子供を抱えて逃げ惑う女性が、こんなセリフを叫びます。

 

原発は安全だ!

危険なのは操作のミスで、原発そのものに危険は無い。

絶対にミスを犯さないから問題は無い、とぬかした奴らは許せない!

あいつら、みんな縛り首にしなくちゃ、死んでも死に切れないよ!

 

これは、まるで2011年3月11日に起きた東日本大震災の福島原発事故を予言しているようでもあり、ネット上では「黒澤は将来起こる原発事故を予見していた!」と噂になり話題になったようです。

 

スピルバーグとジョージルーカスの支援で実現した映画『夢』

 

黒澤明の夢は、カンヌ国際映画祭でオープニング上映された記念べき作品でもあります。

この作品はスティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカスの資金援助を受けることにより制作することができました。

そのため、映画の配給権は、ワーナー・ブラザーズに渡ってしまい、

当時は日本では自由に上映することが出来ない状況となってしまいました。

また国際映画祭ではオープニング上映されるという快挙を成し遂げた作品でもあります。

さらに、この映画の第五話「鴉」では、ゴッホ役を「タクシードライバー」「レイジング・ブル」の監督・マーティン・スコセッシ氏が演じています。

つまりこの『夢』には、アメリカ映画界の3人巨匠が参携わっている、黒澤にとって記念碑的な作品ともなっています。

黒澤明という映画監督の偉大さが改めて感じられた作品でもあります。

その後「影武者」という映画ではフランシス・フォード・コッポラが外国版プロデューサーとして参加おり、70年代、80年代以降を牽引してきた代表的な映画監督たちへ、黒澤明が与えた影響の凄さを改めて感じます。

 

映画『夢』の感想

 

『夢』はもしかしたら退屈だと感じる人にはとにかく最初から最後まで退屈な作品かもしれません。

ただし、タルコフスキーなどが好きな人にとっては、とことんツボにはまる作品であるとも言えるでしょう。

私自身、『夢』は画家・黒澤明が作る最高の美術映画だと思いました。

ただ見事な映像群だけで充分「生」や「死」などを表現できているのに、登場人物達が少ししゃべり過ぎな気もしました。

黒澤映画では「水爆」「戦争」や「近代化」などの話題にになると、どうしても諭されているように感じてしまいます。

タルコフスキーの映像美が一言でいうと「静」であるのに比べ、黒澤の映像美は「動」であるとも言えます。

作品全体が力強い命のエネルギーでギラギラしており、そこが黒澤作品の魅力であることも確かなようです。