注目キーワード
  1. ランキング

『乱』(黒澤明映画第27作品あらすじと解説):シェークスピアを凌駕した不朽の名作

1985年(昭和60年)6月1日に公開された映画『乱』。

この映画は、黒澤監督が自分自身をシェークスビアの「リア王」に見立てて制作されました。

この記事では、黒澤明監督の27番目の作品となる『乱』をご紹介します。

映画『乱』あらすじ

 

 

戦国の世を生き抜き、やがて年老いた武将・一文字秀虎.

三人の跡取り息子達に自分の領土を分け与えるにあたり、「一本の矢はたやすく折れるが三本束ねた矢を折るのは難しい。」と諭し、息子達に互いの協力を促そうと考えます。

しかし三男の三郎は束ねた矢をへし折り、逆に父の息子達への陳腐な訓戒を批判します。

その行動に怒りを露にした秀虎は、三郎を追放してしまい、領土を長男と次男にだけに分け与えしてしまいます。

だが、秀虎をひそかに忌み嫌う妻の意を汲んで、長男は秀虎を冷遇するようになります。

そして次男も・・・。

シェークスピアの「リア王」を日本の戦国時代も物語にアレンジし、大規模な合戦シーンを交えて展開する悲劇の物語に仕上げています。

 

映画『乱』は黒澤明の自叙伝

 

乱はシェイク・スピアの「リア王」を黒澤流に解釈し大胆にアレンジした、老城主と3人の息子たちの愛憎渦巻く争いを描いた戦国スペクタクルです。

黒澤自身ははこの作品を自分の「ライフワーク」であり、「人類への遺言」でもあると語っています。

さらに黒澤監督は、仲代達矢演じる主人公の一文字秀虎が、自分自身をモデルにした登場人物ですとも語っています。

実は乱の企画自体は、既に70年代には立てられており、「影武者」のロケハン時にはすでに準備も進められていたと言います。

しかし、そのダイナミックな内容から映画製作には莫大な製作資金が必要であると予想されます。

そのため、日本の映画会社は赤字を恐れ尻込みをしてしまい、映画の制作自体が危ぶまれました。

結局フランスのプロデューサーのセルジュ・シルベルマンが援助を申し出たことで、乱の製作はようやくスタートラインに立ちました。

もしこの申し出がなければ、名作乱は生まれなかったかもしれません。

巨大な城のセットや色彩豊かな衣装、また独自の美しい画面構成など、黒澤映画の様式美はこの作品で頂点を極めたと言っても過言ではありません。

特に城が燃えるシーンは圧巻です。

ただ秀虎演じる仲代には「こけたら4億円はパァーだよ」と叱咤激励されたと言われています。

また嵐のシーンは実際の台風を待って撮影されており、黒澤監督の並々ならぬ執念が感じられます。

もし台風が来なければ来年まで撮影は持ち越しとなり、少し大袈裟に言えば、黒澤の納得のいく台風が来なければ、映画製作自体がそこでストップしていたかもしれません。

 

映画『乱』はシェークスピアを凌駕した名作

 

シェークスビアの「リア王」の時代劇版である映画『乱』。

役者たちの狂気の演技。

黒澤監督の才能光る、構図と色彩美。

燃え上がる4億円のセット。

どこをとっても規格外の映画です。

もしシェークスピアがこの映画を観たら、シェークスピアすら想像し得なかった演出の連続に絶句したことでしょう。

CGが中心である現在の日本では、これだけスケールの大きい映画が新たに誕生することはないでしょう。