黒澤明監督デビュー作『姿三四郎』:戦時中の日本人を魅了した大ヒット作

黒澤明監督のデビュー作の『姿三四郎』(公開:1943年3月25日)。

公開された当時はは第二次世界大戦中だったこともあり娯楽に飢えた大衆たちに評価され、大ヒットとなりました。

特にこの映画の見せ場で使われた、スローモーションは、当時の映画では斬新なテクニックだったそうです。

この記事では『姿三四郎』のあらすじや解説を紹介いたします。

『姿三四郎』 あらすじ

 

会津から柔道家を目指して東京へやってきた姿三四郎。

門馬三郎が館長を務める神明活殺流に入門するために道場に赴きます。

しかし、道場に赴いた当日は、門馬が修道館の矢野正五郎の襲撃を企てていた日でした。

門下生たちと矢野正五郎を襲撃する門馬。

しかし、門馬たちは矢野たったひとりに返り討ちにあってしまいます。

その結果、神明活殺流は崩壊。

その様子を目の当たりにした三四郎は、矢野の立ち振る舞いに圧倒され、矢野に弟子入りします。

数年後、修道館の門下生の中でもトップの実力を持つ柔道家に成長した三四郎。

そんなある日、修道館に来客があります。

来客は怪しく、計り知れない気配…。

 

「姿三四郎」 解説

「姿三四郎」は、黒澤明氏の映画監督デビュー作品です。

作家・富田常雄が描いた小説の前半部分から、恋愛のエピソードをカットし、柔道の武術に精進する三四郎の姿を通して人間的に成長していく青年の様子を描いています。

物語の中心は、修道館の師匠、矢野正五郎と三四郎とのやりとりです。

師弟関係を重視したストーリーになっています。

この師弟関係は、その後の黒澤監督作品でも多く見られるようになります。

黒澤監督の演出は、柔道の稽古や試合などの活動的なアクションシーンだけではなく、ドラマの部分でも躍動的に効果を発揮しています。

例えば、三四郎と小夜が神社の階段で絡むシーンがあります。

それまでの日本映画では、こういったシーンは実に淡泊に、あっさりと見せていました。

この作品では、それまでの日本映画になかった迫力あふれるシーン展開となっています。

最も印象的だったシーンは、三四郎が門馬を投げ出すシーンです。

これは黒澤監督だからこそ撮れた名シーンです。

門馬が道場で、身体を横向きにして浮遊している静止写真を効果的に使っているのです。

次のショットで、門馬は羽目板に身体を強く打ちつけられます。

静まり返り道場。

言葉をなくし、ただ立ち尽くすだけの人々を、カメラがゆっくりと左から右へ追います。

そして、叩きつけられた門馬のアップ。

同時に障子戸が天井近くからスローモーションで門馬の上に落ちてきます。

見ているだけで、『門馬は死んだ!』と思える演出方法です。

この演出方法は、それまでの日本映画にはないものでした。

スローモーションを効果的に使った手法となりました。

 

『姿三四郎』・現代人のレビュー

 

現代の人にとって、黒澤明監督デビュー作『姿三四郎』はどのように見えるのでしょうか?

AmazonとYahoo!映画などのサイトには、多くのレビューが寄せられています。

今回は、それらのサイトに寄せられたレビューの一部をご紹介します。

 

Amazonレビュー

 

・これが黒澤監督のデビュー作なのかと思うと、圧巻の一言です。

・度肝を抜かれる場面が作品の中に数多く出てきます

・このデビュー作を土台に、その後の黒澤映画に見られる要素がこの1本に濃縮されています。

・場面設定に長けています。

・躍動感、勢い、瑞々しさ、当時の観客を惹きつけた理由がとてもよく分かります。

・明治は、自由闊達な時代と言われていますが、その光景がこの作品から十分に伝わってきます。

・このデビュー作こそ、黒澤ファンなら必見です。

・見応えがあり、見終わったあとで心がスカッとするさわやかな映画になっています。

・当時の撮影技術では精一杯だったのかも知れませんが、黒澤監督の作品は音質が悪く、残念です。

 

Yahoo!映画レビュー

 

・この作品で映し出された美しさ以上に強いものはないと思います。

・荒々しい場面がこの一作で充分に楽しめます。

・老境に達した風格を、志村喬さんが丁寧に演じています。

・いちばんの迫力を感じたのは、祭りでの男衆との喧嘩のシーンでした。

・正直、そんなに面白くはありませんでした。

・「最長版」はDVD限定です。

・戦時の監視下の中で作った作品としては、それなりの規制があったのではないか。

・最初から最後まで、女から逃げている作品です。

・礼に始まり、礼に終わる。柔道の精神ははるか昔から生きていたのでしょう。

・黒澤監督の初作品とのことで期待しましたが、最初から良い作品は作れなかったのでしょう。

・作品の途中で、急にハッとさせる画面が幾度も登場します。

・わずか一瞬の冴えるショットがとても魅力的です。

 

 

その他のサイトのレビュー

 

・言葉に、無駄のない力強さを感じます。

・ラストの決闘シーンは、一見の価値があります。

・ちょっとしたメロドラマのようでした。階段の行き来のみという空間だけが舞台のようです。

・真の強さとは何かを問われている作品です。

・黒澤監督のデビュー作品と思うからか、よくできている印象です。

・目が離せない長い決闘シーンこそ、黒澤映画の真の姿でしょう。

・志村喬さんが、見事に年齢以上の役を演じ切っています。

・当時は戦時中でしたが、その中でも黒澤監督が表現したかった「色」がはっきりと感じ取れます。

・観ていて、ふとバガボンドを思い出してしまいました。

・当時は表現の自由などない時代。黒澤監督の描き出す姿三四郎は、躍動力にあふれています。

・最初から最後まで、風の強さしか感じませんでした。

・白黒映画の方が、逆に味が出ているように思います。

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